とある一日の終わり。
なきじゃくる君とこうして話をしていると、こどもみたいな君が可笑しくってたまらない。もうすぐほんとの大人にならなくてはいけないはずなのに、君ったらちっとも準備が出来ていないじゃないか。ぼくは、君のヒックヒックとなきじゃくる声を聴いたらば、笑えて笑えてしかたがないんだ。細胞にまるで追いつかない君の心や傷に、嫉妬と感動を覚えるくらいだよ。純粋かつ潔白を証明するかのように生きてる君。でもぼくは、君の大昔のことをよく知っているからね。ぼくは君の傍らに座っていたんだから。在ったことは在り、無かったことは無し、君の斑点模様のことは誰も責めやしないのに、どこから持ってきたものなのか、上から真っ白に塗りたくっているのを見たよ。白粉を塗って舞妓にでもなるつもりなのか、それとも歌舞伎を始めるのか、まるで追いつかない方向へと如何にも難儀な方角へと走り出しては、タイムスリップの時間摩擦を感じて、身も心もすり減らしているようだね。まぁ、がんばれ。とだけ言ってあげよう。
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其の後の別件。
冷静をよそおってる君は、ぼくの話を聞くとみるみる元気になってゆく。いつの間にかぼくが君に与えたかのような雰囲気になっていたが、そいつはちがうぞ。君はいつもぼくの憂鬱をまるでデザートのごとくおいしそうに食べていたんだね。気づけば毎度毎度、ぼくの憂鬱は君の胃袋の中へと吸い込まれ、ぼくのカラダは前よりか少しだけ、軽くなったかのように思われる。
なんということだろうか。
当然のように思われたありとあらゆる物達は、この両の手から零れ落ちてゆくではないか。それには君の助言の通り、凄まじい勢いで砂の城が波にのまれて一瞬にして消えて無くなる。